趣意書

「自彊術」は未だ医療制度の整備が不充分な時代に、中井房五郎により万病克服の治療体術・健康体操として創案されたものです。大正6年には文部省修文館において試演され、田所美治文部次官より『優秀な純日本式体操』との評価を受け全国の学校などで実施人口は300万人に上ったと言われ、ラジオ体操が普及される以前の国民体操とも言うべきものでした。しかし戦後急速に進歩した欧米医学・医療等に幻惑されて、世人が古めかしい健康体操などに見向きもしなかったこと、また現代医学理論をもってこの体操の優秀合理性を解明する者が現れなかったことなどから、この優れた体操は廃れてしまいました。

その後、1965年久家恒衛氏(1975年95歳で没)より自彊術を伝授され、自他の難病の数々を治療した東京大学医学部病理学講師・教育学部保健体育科講師であった近藤芳朗医学博士の医学的解明と同幸世夫人の正確な技術伝承によって再び世の視聴を集め「自彊術」の復活をなしとげ、1987年には、文部科学省より「社団法人 自彊術普及会」の設立が許可されました。また、2011年4月1日には、平成20年12月の新公益法人制度改革に伴う内閣府公益認定等委員会による認定を受け、新生「公益社団法人 自彊術普及会」としての大きな一歩を踏み出すことになりました。

自彊術は、老若、健常・病弱者を問わず各人の能力に応じたその実践が人の持つ自己免疫力や自己治癒力を高め、また自律神経(交感・副交感神経)のバランスを整えるという特長を持っております。そして、その効用は「自力自彊の精神」(「彊」は「強くなる、努める、努めて境(限界)を広げる」の意)と相俟って、『自らの健康は自分で守る。食を正しくし、医薬万能の思想を排し、自彊術体操を毎日続ける』ことにより、自らの心身の健全性を維持増進せしめるのみならず、更にその普及活動を通じて、多くの人々の心身の健全な発達に寄与し、健康で豊かな社会の形成に大きな貢献をしているものと自負しております。

また、現在賛助会員として自彊術を実践し、その健康の維持・増進を図っている方の多くが50歳以上の年齢であることから、自彊術体操の普及活動は、その自助努力により医療に頼らずに健康に老いる高齢者を増加させ、また自立的で誇りを持ちつつ共生することを可能にするなど高齢者福祉の増進にも大きく貢献しているものと考えております。

本会では、全国の支部約60、教室数約4,200において指導講習会の実施や指導者の養成など、自彊術の普及促進事業を実施し、また、講演会の実施、調査研究とその公表、国内外の諸団体との文化交流、記念館の公開展示などにより自彊術の優秀合理性を広く社会に普及啓発する事業を実施しております。先にも述べた通り、それらの事業の実施は国民の心身の健全な発達に寄与し明るく豊かな社会を形成する基盤を構築するものであると同時に高齢化が進む社会における高齢者福祉の増進にも大きな貢献をするものであります。

私達は、本会の事業のより一層の充実を図り、社会の、そして時代の求めに真摯に応え、この優れた自彊術体操を後世に伝承することのできる組織づくりと事業運営を心がけて参りたいと考えております。皆様方が本会の設立趣意をご理解下さり、賛助会員として本会の事業遂行にご協力を下さることを切に願うものであります。

平成23年4月1日

公益社団法人 自彊術普及会

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